身近な植物と菌類 〜近畿の季節の野草〜植物関連

学名おぼえ書き

植物関連|2011,09,20
学名のパターンと意味/学名を声に出して読むための発音表


学名の基本的な正しい表記は
属名 種小名 命名者(=原記載者)名 命名年
ですが、一般に用いられる図鑑では殆どの場合、命名年を省略しています。そこで、ここでも命名年は省略して話を進めていきます。

属名および種名・変種名等とそれ以外を明確に違えて表示する

よく次ようなイタリック体まじりの表示
例:Geranium thunbergii Siebold et Zucc.
を見かけますが、
これは属名および種名・変名等とそれ以外を明確に違えて表示しなくてはならない、というきまりを守った表示です。
印刷物では多くの場合、属名・種小名等をイタリック体、その他を標準字体で表す事が多いようです。
ウェブ等の画面表示を目的としたものも印刷物に多い表示にならうケース殆どですが、
・・イタリック体は画面に表示すると崩れて正確に読みとりにくくなる
・・読んでもらうために表示しているので、読み取りにくい字体を使いたくない
などの理由から、私のブログではイタリックではなく太字と標準字で学名を表示する方法にしていました。

(APG分類体系が一般的になるにつれ、私の参照している図鑑(新エングラー式)の学名は一般には用いられないものが多くなりました。そのため、ある時点から、全ての掲載種の学名の表示をやめました)

命名者名の略表記について

命名者名は 判別できる程度に略して書かれる場合が多いですが、略表記名であっても同姓などが複数あれば省略のしかたによっては混乱します。そのため、山田太郎は T.Yamada 山田花子は H.Yamada のように、固有になるよう考えて略されています。姓だけを略表記として通すことができるのは、他にまだ同性の命名者が登録していない場合に限られます。

英姓でありがちなGRAYの場合、
単にGrayといえばSamuel Frederick Gray(1766-1828)を指します。
A. Grayとなると、 Asa Gray(1810-1888)を指します。
B. Grayでは、Bruce Gray(1939-)となり、略表記といえど重ならないように気遣われています。
長い名前だからといって、他の省略の規則に沿ったつもりで適当に省略すると、他のGrayさんと見分けがつかなくなってしまう恐れがあるので、よくわからないまま無闇に省略しないようにしたいものです。

有名な人物

たとえば分類学の草分けである植物学者リンネの場合だと、L.のように一文字に略される例もあります。ただ、厳格な決まりがないため、Linn. や Linne のように、図鑑や文献によってまちまちの表記になっています。(末尾にピリオドがついているのは、省略されていることを表しています)
ただし、同じ文献の中で リンネをあらわすのに 学名によって L. であったり Linn. であるといった不統一な表記にするのは誤った方法であるとされています。

リンネのような超有名人に限らず、略表記として使用される名前が複数ある人も結構います。
たとえばAugustin Pyramus de Candolleは、DC. であったり、A. DC. であったり、de Candolle と書かれることもあります。万人がインターネットでウェブを持つようになった昨今では、適当な略表記をする人も少なくないので、DC.と書いてあるからといって、必ずしもA. DC.のことを指しているとは限りません。その辺は注意して読んだり、原記載者と転属者との生年-没年を比べたり、専門や主要フィールドを確認したり、信頼のおけるサイトを複数照らし合わせたりしてよく確認する必要があるでしょう。

綴り間違いは直さない

たとえ種小名の綴りが間違っていたとしても、一度記載された学名の綴りは修正されません。たとえば無理に例を作って極端に言えば、恐らくはjaponicaという種小名にしたかったと思われるのに、正式な原記載がjaaponicaになっている。これはもう、jaaponicaにしておくしかありません。誤りに気がついて正しい綴りに書きかえてしまうと、正しい綴りであっても学名としては誤っているという事になります。

本によって学名が違う理由

最新の文献に頼れば正しいものに行き当たる、というわけではないのが学名のようです。
たとえば、Silene armeria L.(マンテマ属 ムシトリナデシコ)という植物について、Dianthus属に転属して発表し、それが植物学のニュースとして報じられたとしても、世界の学者たちに広く受け入れられなければ、使用されません。
全ての学者に受け入れられるというのは、思いのほか難しいことのようで、かなり古く転属が発表されたものでも、以前の分類を使いつづける場合も数多くあり、それ自体は間違ったことではないため、文献を参考にしようとする私達は非常に困ってしまうことになります。
さらに、学者の考え方によって、同じ植物の変種・亜種・品種などの分類レベルが異なり、ある図鑑では変種扱いされているものが、別の図鑑では亜種となっている事など、ざらにあります。
植物学者ではない私のような人々は、「主となる図鑑を決め、それに沿って学名・分類を参照していく」しかなさそうです。


学名のパターン数例と その意味

※説明のために挙げた例の学名の分類は「新エングラー式」ですが、学名の記述方式には関係しないので、そのまま掲載しています。

アメリカフウロの例
Geranium carolinianum L. 
属名 この草本が属するグループの名称 種小名 特徴をあらわす形容詞や、人物名・地名などがつけられる。 命名者名
種の次にくるのは、 この種を発表・記載した命名者の名前
Geranium carolinianum L.

ゲンノショウコの例
Geranium thunbergii Siebold et Zucc.
属名 種小名 命名者名
この場合、命名者がSiebold氏とZucc.氏の共同であるため2人の名前が et (andの意味)でつなげられている。
Geranium thunbergii Siebold et
(andの意)
Zucc.

アレチヌスビトハギの例
Desmodium paniculatum (L.) DC.
属名 種小名 命名者名
最初にカッコでくくられている名前がある場合、くくられたほうが元々の命名者〜この場合 L.〜で、次に続く名の人物〜この場合 DC.〜が転属など何らかの変更を行った事をあらわす
Desmodium paniculatum (L.) DC.

アカガシの例
Quercus acuta Thunb. ex Murray
属名 種小名 命名者名
新種として名づけたのは先に書かれたほうの人物〜この場合Thunb.〜であるが正式に記載をつけて発表していなかったため、後に ex に続く名前の人物〜この場合Murray〜が記載をつけて登録したことをあらわしている。
Quercus acuta Thunb. ex
(〜による、の意)
Murray

ナヨクサフジの例
Vicia dasycarpa Ten. var. glabrescens Beck
属名 種小名 命名者 変種
※次に変種名を記載すること
を宣言している
変種名 変種
命名者
Vicia dasycarpa Ten. var.
(varietyの略)
glabrescens Beck

ヒヨドリジョウゴの例
Solanum lyratum Thunb. f. xanthocarpum (Makino) H. Hara ヒヨドリジョウゴの例
属名 種小名 命名者 品種
※次に品種名を記載することを宣言している
品種名
(園芸上の品種を指すのではない)
品種命名者
※カッコ内の人物が元々の品種命名者で、カッコ後の人物が移動や統合などを行った事をあらわす
Solanum lyratum Thunb. f.
(formaの略)
xanthocarpum (Makino) H. Hara

ヨブスマソウの例
Cacalia hastata L. subsp. orientaris Kitam.
属名 種小名 命名者 亜種
※次に亜種名を記載すること
を宣言している
亜種名 亜種命名者
Cacalia hastata L. subsp.
(subspeciesの略)
orientaris Kitam.

シロバナマンテマ(マンテマの基本種)の例
Silene gallica L. var. gallica
属名 種小名 命名者 変種
※次に変種名を記載することを宣言している
変種名
Silene gallica L. var.
(varietyの略)
gallica
(種小名と変種名が同じ場合、その種の基本種 または 母種であることを示す)
変種が存在するものは、必ず基本種が存在する。変種が発見・記載された後、先に記載されていたほうの種を基本種と定めて、var.の後に 同じ種小名をつけて登録される。ただ、この作業は誰にでもできることから、基本種をあらわす変種名に命名者名は記載されない。

学名を声に出して読むための発音表
※誤りがある可能性があります

はじめにご案内しておきますが、学名の読みは乱暴に言うと
「好きに読んでかまわない」性質のものです。
アルファベットを自国語に使わない日本では、英語読みするのも1つの手です。
それでもなお、学名表記につかわれる言語(ラテン語)風に読もうとするならば、
私が調べた以下の表もお役に立てるかもしれません。

  単独 +母音 特例 特例
a a ア              
b   ba バ bi ビ bu ブ be ベ bo ボ bs プス bt プト
c   ca カ ci キ cu ク ce ケ co コ    
ch   cha カ chi キ chu ク che ケ cho コ    
d   da ダ di ディ du ドゥ de デ do ド dy ドュ  
e e エ              
f   fa ファ fi フィ fu フ fe フェ fo フォ    
g   ga ガ gi ギ gu グ ge ゲ go ゴ    
h   ha ハ hi ヒ hu フ he ヘ ho ホ    
i i イ              
j   ja ヤ   ju ユ   jo ヨ    
j変則   母音+ja
イヤ
  母音+ju
イユ
  母音+jo
イヨ
   
k ※注1  
l l ル※注2 la ラ li リ lu ル le レ lo ロ    
                 
m m ム※注2 ma マ mi ミ mu ム me メ mo モ m(b) ン m(p) ン
n n ン※注2 na ナ ni ニ nu ヌ ne ネ no ノ    
o o オ              
p   pa パ pi ピ pu プ pe ペ po ポ    
ph   pha パ phi ピ phu プ phe ペ pho ポ phy フィ  
q   qua
クゥア
qui
クゥイ
  que
クゥエ
quo
クゥオ
   
r r ル※注2 ra ラ ri リ ru ル re レ ro ロ    
rh   rha ラ rhi リ rhu ル rhe レ rho ロ    
s s ス※注2 sa si su se so    
t t ト※注2 ta タ ti ティ tu トゥ te テ to ト    
th   tha タ thi ティ thu トゥ the テ tho ト    
u u ウ              
v v ウ va ウァ vi ウィ vu ウ ve ウェ vo ウォ    
w ※注1  
x x クス xa クサ xi クシ xs クス xe クセ xo クソ    
y y イ  
z   za ザ zi ジ zu ズ ze ゼ zo ゾ    
子音重複 同じ子音が2度続く場合は原則として促音になるが、
別々に読んでも間違いではない。
例1 lla ッラ(ルラ) 例2 ppa ッパ(プパ) 
nnの場合は 別々に読む。 例 tennius テンニウス
子音+it ット と読む場合が多い
注1 通常ラテン語にK,Wの文字は使われないが現代の学名には時折登場する。 その場合は ふつうに英語またはローマ字読みすればよいでしょう
注2 単語の末尾に使われているか、子音が続く場合(特例を除く)
備考 人名などであきらかにラテン語でない固有名詞の場合は無理にラテン読みせず普通に読んでかまわないでしょう


まだまだ調べながら書いている覚書程度の知識ですので、誤りもあるかもしれません。
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